会報第27号 グリーンウォッシュは許されない

グリーンウォッシュは許されない

 北海道は2月8日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組み「ゼロカーボン北海道」の実現に向け、排出量削減に関する2030年度の中間目標を2013年度比48%減に引き上げる案を北海道環境審議会に提示しました。

 3月に正式決定されます。

「ゼロカーボン北海道」は国の脱炭素政策に合わせた北海道の事業で、国の排出量削減に貢献することを目指します。

 北海道は当初、2030年度の目標は2013年度比35%減としていましたが、日本政府が昨年4月に従来の26%から46%に引き上げたことに伴い北海道も上方修正することになりました。

「ゼロカーボン北海道」の実現には北海道民一人ひとりの協力が不可欠です。

 北海道環境審議会において「2030年まで8年しかない。行動変容を求めるだけでなく、実効性のある取り組みを北海道民に示してほしい」との声が上がりました。

 これからの短期間での大幅削減には、石炭火力発電を一刻も早く全廃する必要があります。同時に多くの技術の中で、価格が安く拡大できる自然エネルギーに心血を注ぐのが正しい選択です。

 8年後の2030年に向けたエネルギー構造の転換に使える資金、人材、時間は限られています。これに向けた集中的な投資が必要とされています。

 石炭産業からの転換にかかわる、職業訓練、補助金、新たな雇用機会の創設など政治の政策が必要になります。

 環境事業において、見せかけの環境配慮を装うだけで中身の伴わない事業をグリーンウォッシュと呼びます。黒い汚れをグリーンで洗い流す、グリーンウォッシュと呼びます。

 釧路コールマインは、発電所の排気から5万トンの二酸化炭素を取り出し、固化して(炭酸カルシウム、炭酸マグネシュームに化学反応させる)炭鉱の空洞に埋め戻すことを目指すとのことです。

 発電所から排出される51万2000トンの内のわずか5万トンです。明らかに少ない。釧路石炭火力発電所から排出される51万2000トンもの二酸化炭素をどこに埋め戻すつもりなのでしょうか。

 危険なリスクを犯し、もう人が近づかない炭鉱の奥深くに埋めるための事業を実施するつもりなのでしょうか。そのことには疑念を感じざるを得ません。

 カーボンリサイクル事業においては、日本中で二酸化炭素を埋め戻す場所探しに四苦八苦しています。国内に埋める場所はないと言えるでしょう。

 二酸化炭素を取り出すためには高温環境を作り出し、化学反応させなければならず、多くのエネルギーが必要とされます。

 釧路石炭火力発電所が石炭を燃やして大量の二酸化炭素を排出して作り出したエネルギーを使い、二酸化炭素を取り出す事業を行ないます。

 井戸から汲んだ水を川に捨てに行くようなものです。

 そのエネルギーを再生可能エネルギーに向けて使うことは出来ないのでしょうか。

 将来を見据えると、その事業が賢明な選択となるのではないでしょうか。

 北海道環境審議会が示すように、2050年温室効果ガス排出の実質ゼロは、来たるべき2030年に向けてのその取り組むべき礎を築かなければならない期限です。その期限は目の前にあります。今すぐに始めなければならない喫緊の事態です。

 わずか5万トン、それも10年後に出来るのを目指すということは、現実からかけ離れた夢物語と呼ばざるを得ません。

 また、一日に100台もの石炭を運ぶ大型トラックが走り回り、排気ガス、振動騒音をまき散らします。

 ノーベル賞を受賞した真鍋淑郎さんを始め、多くの世界の科学者は現状の気候危機に対して、石炭発電所はいま直ぐに廃止し、二酸化炭素の削減に取り組まなければなければならないとの声明を発表しています。今すぐにです。

 「カーボンリサイクル」、その耳障りはとても良いです。 しかし、それは石炭火力発電を延命させるための、まだ未完成の技術で、多額の費用が必要とされるものです。

 その実態は、石炭火力発電所から大量に排出される二酸化炭素のほんの一部の回収しかできない架空の技術ではないでしょうか。

 会報前号で述べた通り、ヨーロッパでは石炭火力発電のカーボンリサイクルの技術開発は諦めました。

 唯一その技術は、再生可能エネルギーの事業を行う段階で、どうしても出てしまうカーボンを除去するためにその技術が使われているのみで、石炭火力発電では使われていません。石炭火力はすぐに廃止されるべきものと考えられています。

 釧路石炭火力発電所、釧路コールマインの事業はグリーンウォッシュと呼ばれるべきものとなっています。

 私たち北海道民は、2030年までに2013年度比で48%の二酸化炭素の削減をしなければなりません。

 釧路石炭火力発電所、釧路コールマインの事業は北海道民として許容されません。

脱炭素先行地域への応募を

  釧路湿原国立公園、阿寒摩周国立公園、厚岸霧多布昆布国定公園、釧路に住む私たちは恵まれた自然環境の中での生活を享受しています。

 あまりに身近な環境のため、その素晴らしさに気付けない事があるかもしれません。

 私たちは経済第一、たくさんのお金を得るために大急ぎで走って来ました。

 しかし、その経済を維持し発展させるために大量のエネルギーを作り出さなければならなかった。

 この経済第一主義、大量のエネルギーを作り出すことが自然環境に多大な負荷を与えてしまったようです。

 昨年、IPCC(国連気候変動政府間機構)は、「人間起源の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定しました。

 先日開催された、釧路市長も参加した釧路商工会議所青年部の例会では、官民一体で地域活性化で未来を探る意見交換が行われたとのことです。

 しかし、気候危機、脱炭素の話題は議題にのぼらなかったようです。

 地域活性化で未来を探るためには、その根底にある私たちが享受している貴重な環境を守り、子どもたちに受け継がせてゆくことが地域活性化の根本なのではないでしょうか。

 環境省は、再生可能エネルギーの導入などを通じて温室効果ガス排出量の削減に取り組む自治体を募集しています。

 札幌市、苫小牧市、石狩市、上士幌町、鹿追町が応募しています。

 私たち釧路市、釧路市民も太陽光などを進んで導入し、環境省の「温室効果ガスの削減に取り組む自治体」に応募することを強く呼び掛けます。

会報27号のpdfファイルです。

https://nocoal-kushiro.jp/wp-content/uploads/2022/03/会報27号.pdf