会報22号排出し続ける有害物質

現在、当会には昨年の発電所の本格運転以来、空気清浄機のPM2.5が反応し続けているとの報告が多く寄せられています。

本来、石炭発電所に設置しなければならないSox(硫黄酸化物)を除去する排煙脱硫装置、Nox(窒素酸化物)を除去する排煙脱硝装置、を設置しておりません。

神奈川県の川崎バイオマス発電所は、発電出力が33,000kw、燃料が木質チップ年間18万トン使用とバイオマス発電に関しては釧路石炭火力発電所と同じ規模です。

両方の発電用のボイラーとも循環流動層ボイラーを使用し、多様な燃料を燃やすことが出来ます。

川崎バイオマス発電所は燃料がバイオマスのみですが、釧路石炭火力発電所はバイオマスに加えて石炭も使用しています。

川崎、釧路ともバイオマス燃料の状況は同じですが、釧路は加えて石炭も燃やします。しかし、公害防止の設備に関しては雲泥の差があります。

川崎発電所は、窒素酸化物除去「排煙脱硝装置」ばいじん除去「バグフィルター装置」硫黄酸化物除去「排煙脱硫装置」を備えています。

しかし、釧路は「バグフィルター装置」しかありません。バグフィルターでは10μm以上程度のばいじんは採捕出来ますが、いわゆるPM2.5(2.5μm)と呼ばれる人の肺の奥深くに入り込む極微小のばいじんは取り切れません。PM2.5を補足するためにも、川崎バイオマス発電所に設置されております「排煙脱硝装置」「排煙脱硫装置」は最低限必要な設備です。

また、釧路石炭火力発電所と同じ出力、同じ循環流動床ボイラーの仙台蒲生バイオマス火力発電所の環境アセスメントを参考に有害物質の二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質飛来地点を図示いたしました。

仙台蒲生バイオマス発電所の有害物質の二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質の飛来地点の定義は、「最も広範囲に影響が及ぶと考えられる大気質の影響範囲を発電所運転時の大気質の最大着地濃度出現距離の約2倍の範囲を包括する地域とする」としています。

釧路石炭火力発電所の最大着地濃度出現距離は1.7kmです。よって、大気質の影響範囲は半径3.4kmの地域となります。

この範囲には、釧路市役所、市立釧路総合病院、北海道教育大学、釧路湖陵高校、特別養護老人ホーム、幣舞中学校、清明小学校、明照幼稚園、福ちゃん保育園など多数の公共施設などがあります。

ここで生活する私たち住民の健康を害している釧路石炭火力発電所は、運転をすぐに停止する必要があります。

過去の「生物大量絶滅期」と現在との酷似

川で子どもが溺れている時、私たちは黙ってそれを見過ごすことが出来るでしょうか。

他人事のように気にしないでそこを通り過ぎる人もいるかもしれません。多くの人は何らかの手段を取ろうとするでしょう。

泳げる人は川に飛び込んで子どもを助けようとするかもしれません。泳げない人は救急隊に連絡し、ロープを用意して川に投げ込んだりするでしょう。

世界の科学者の中で、「現在の地球環境は、子どもが川で溺れているような状況だ」と語られる学者もおられます。

イギリスリーズ大学のアレキサンダー・ダンヒル教授は、現在の地球は過去5億年間で6回目の「生物大量絶滅期(生物の75%絶滅)」に突入していると言っています。(5億年前は現在の生物の祖先がそろそろと地球上に現れ始めた時期です)

前回の「生物大量絶滅期」は地球上を多くのの大型の恐竜が跳梁跋扈していた時代です。6,600万年前に地球に巨大隕石が衝突して多くの恐竜が姿を消し、生物の76%が亡くなりました。恐竜が絶滅したあと、哺乳類と鳥類が急激な進化と多様化を成し遂げました。

「大量絶滅」は、新しい形の生命に地球を明け渡す意味合いもあり、大変恐ろしい現象です。

しかし、地球に巨大隕石が衝突するという事象は非常にまれなことです。

「生物大量絶滅」の最大の原因は地球の炭素循環の激変です。何百キロもの先に届くように溶岩を吐き出す巨大噴火は、大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に放出し「暴走温室効果」と呼ばれる、海の酸性化、貧酸素化を引き起こし生物に多大な影響を及ぼして来ました。

 過去5億年間で5回の「生物大量絶滅」が引き起こされた証拠となる大量の化石が、地中に眠っています。

1回目、4億4400年前のアメリカ大陸の東部のアパラチア山脈の隆起です。隆起により表出した岩石が風化して海に溶け出し、大気中の二酸化炭素と化学反応を起こし、二酸化炭素を減少させ寒冷化が起こりました。サンゴ、シャミセンガイ、ヤツメウナギ、三葉虫などの85%の生物が絶滅しました。

2回目は3億5900年前のシベリアのビリュイ・トラップと呼ばれる巨大噴火で温室効果ガスによる温暖化と二酸化硫黄の酸性雨です。アンモナイト、ヤツメウナギ、イソギンチャクなどの生物の75%が姿を消しました。

3回目は2億5200年前、地球史上最大の大量絶滅で海に住む生物の96%、陸に住む生物の75%が死に絶えました。シベリアのシベリア・トラップという巨大火山の噴火です。現在の地球の全ての化石燃料の2.5倍の量を燃やした際に排出される二酸化炭素の量、14.5兆トンが大気中に放出され、地球全体の平均気温は14℃~18℃上昇しました。

4回目は2億100年前、突然、陸と海に住む生物の80%が失われました。アメリカ大陸とアフリカ大陸が引き離される大陸大移動が突然発生し、その際に大西洋の中央マグマ帯から大量の二酸化炭素が放出され、それによる温室効果ガスにより地球上の平均気温を3℃~6℃上昇させました。

5回目は上記いたしました恐竜絶滅期です。

アレキサンダー・ダンヒル教授は現在の地球は、上記いたしました4回目の2億100年前と同じような状況にある(地球上の平均気温を3℃~6℃上昇)と言っています。

毎年数十億トンもの二酸化炭素など温室効果ガスを大気中に排出する、人間による化石燃料の燃焼は、アメリカ大陸とアフリカ大陸が引き離される大陸大移動が発生し、マグマ帯から大量の二酸化炭素の放出を化学的に再現していることと同じことだと言います。

排出する温室効果ガスの総量では過去の火山噴火での量が圧倒的に多いのですが、

その後の温室効果ガスの放出のペースは、地球史上最大の大量絶滅を引き起こした3回目のシベリア・トラップを上回る速さで温室効果ガスを排出しています。地球の気候は非常に急激な変化にさらされています。

過去の大量絶滅が教えてくれているように、急激な気候変動は地球上に生息する生物に壊滅的な影響を及ぼします。

当然に、最終的には私たちの生活にも影響が迫って来ます。

「現在の地球環境は、まさしく子どもが川で溺れているような状況です」

今、私たちが地球環境に手を差し延べなければ、未来世代の子ども達に対し重大な禍根を残すことになってしまいます。

私たちの暮らすこの町で、大量の二酸化炭素を発生させる石炭火力発電所の運転を許すことは出来ません。

会報pdfです。

https://nocoal-kushiro.jp/wp-content/uploads/2021/06/釧路会報22号完成.pdf

汚染地図pdfです。

https://nocoal-kushiro.jp/wp-content/uploads/2021/06/大気質.pdf