会報28号 脱石炭で経済成長、雇用維持
哲学の巨人、イマヌエル•カントは、その著述の中で「人があるものに関して遵守する必要がないとしても、他の人に関しては遵守する必要がある。人がそれを必要とすることがありえないとしても、他の人々がそれを必要とする可能性は十分にあるからである」と。
昨年10月、イギリスのグラスゴーで開催された気候変動枠組み条約第26回締約国会議では、石炭が気候変動に対する無策の象徴だと示されました。
「石炭火力発電に関連するビジネスリスクは、今後ますます強まる」との共通認識が持たれました。
世界中で、日本各地で勃発している異常気象災害を見るまでもなく、気候危機対策は一刻の猶予も許されない事実は各自の認識の下にあります。
今現在、釧路市の基幹産業は、「石炭」、「漁業」、「製紙」、「観光」となっています。
先月行われた定例市議会においても、釧路市長市政方針で、「地域が持つ資源に負荷価値を付け、稼ぐ力を生み出していく、回復と成長に向けて力強く踏み出す1年とする」と考えを示されました。
また、石炭火力発電に関する答弁では、「国のエネルギー基本計画において、再生可能エネルギーの変動性の調整力として必要であると位置付けられている。市としては、地域の電力の安定供給を確保するとともに、基幹産業である石炭産業を存続するためにも釧路石炭火力発電所の安定稼働が必要であると考えており、その上でカーボンニュートラルの実現に向けて国の目標や方針に基づき地方自治体の役割をしっかり担っていく」と述べられました。
市長の述べました石炭産業を基幹産業としての位置付けることは、現在のグローバルコンセンサスからはかけ離れた考えと言えます。
日本国政府は、地球温暖化対策に消極的な国に送られる不名誉な化石賞を2年連続で受賞し、その政策に倣うことは世界の潮流に逆行していると言えます。石炭産業とカーボンニュートラルは両立できません。
再生可能エネルギーの変動性の調整力として考える場合、再生可能エネルギーの発電拠点を各地に点在させ、それらを連結させるマイクログリッド設備の設置が重要です。
釧路地域は、太陽光、風力、波力、潮力、地熱と地域が持つ資源ポテンシャルは十分過ぎるほどあります。将来主流になる産業の、一足先の成長に向けて力強く踏み出せます。
一昨年発生した胆振地震の電気ブラックアウトも発電を一ヶ所に絞ったために起こりました。発電箇所を分散させておいた場合には、このような事態にはなりません。
現在、日本各地の橋、道路、水道設備などのインフラストラクチャー(建築構造物)は建設当時(東京オリンピック1964年)から50年以上が経過して、構造物の経年劣化があらゆるところで迎えています。
このような状況を踏まえると、一ヶ所で大規模な石炭火力発電所を作るよりも、分散型の発電所を作ることにアドバンテージがあるのは明らかです。
再生可能エネルギーの設備を各所に点在させ、それらをグリッドさせる道東の中心自治体の釧路市が推進の旗を上げるのが本来の姿でしょう。
二酸化炭素の排出削減は今すぐ始めなければならない喫緊の課題です。
釧路市は先の議会において、「釧路コールマインの坑内埋め戻し技術開発に対する支援」として1,000万円の補助金を支出しましたが、見通しの付かない技術開発に税金を使うのは間違いです。
石炭産業からの産業転換投資支援、新たなイノベーションの創出支援(水素技術開発、AI技術開発、蓄電池開発等)、石炭産業からのこれらの産業に関わる雇用確保、雇用支援など。
地球温暖化、気候変動は不可逆的に進行します。一度失った自然破壊は二度と取り戻すことはできません。
ノーベル物理学賞の真鍋淑郎さんも言われているとおり、「今から10年間が重要な期間になる」と。
地域の電力の安定供給も、太陽光、風力、波力、潮力、地熱と地域が持つ資源ポテンシャルを根幹に据えましょう。
自然環境破壊は限界を迎えています。
イマヌエル•カントの言っているように、「釧路市が遵守する必要がないとしても、世界の人々にとってはそれを遵守する必要が十分にある」と。
再びの騒音発生
「窓ガラスの振動で目がさめました」と早朝に電話が鳴りました。
3月12日、14日の早朝に大気放散弁より騒音が発生しました。
3月18日に発電所説明会が開催され、発電所側から、「大気放散弁音軽減対策は、放散弁の高さ3メートルに対して、4、5メートルのコの字形の囲いを海の方へ向けて作る。
発電所通常運転時の騒音対策は、灰をダンプに積むところとバグフィルターの下の方を囲う」との回答がありました。状況を見守ります。