会報第13号発行:釧路火力、試運転中の轟音 高まる住民の不安

2020年9月20日、会報13号を発行しました。

釧路火力、試運転中の轟音
高まる住民の不安

 6月19日から試運転を開始した釧路火力発電所ですが、試運転開始から一週間も経たない23日に騒音問題を起こし、新聞にも大きく掲載されました。発電所からのひどい騒音は、その後も止まりません。
 7月4日の説明会は当然この騒音について説明があるのが自然ですが、当初から想定していたと述べるだけでした。非公開で行われ、メディアや近隣ではないことを理由に考える会のメンバーも説明会の参加を拒否されています。
 その後しばらく発電所は稼働を停止し、お盆明けに再稼働しましたが、8月23日には再び騒音騒ぎを起こしました。その時の騒音値は80デシベルでした。音の目安では、地下鉄の車内と同じ「きわめてうるさい」レベルです。この時は、近隣住民の方々はもちろん、近くの老人福祉施設の方々も驚かれ市役所に連絡されました。続いて8月28日にも騒音騒ぎを起こしました。その日は70デシベルでした。かなり大きな声を出さないと会話ができないレベルです。
 さらに、9月15日から発電所の負荷遮断試験を行うとの情報が入りましたが、この時もひどい騒音が発生し、驚いた近くの住民の方々があまりの音の大きさに自宅の外に出て来ることもあり、問合せの電話が多々ありました。
 ここまで頻繁に騒音を発生させるということは、住民のことはお構い無しと言うことなのでしょう。騒音発生の度に非公開で説明会を開き、謝罪を行い対処すると繰り返しますが、全く改善されません。事業者は、説明会を公開して誰でも入場できるようにし、正しい対処を責任もって表明すべきです。。
 釧路石炭火力発電所を考える会は、発電所との公害防止協定の中ので騒音規制値70デシベルは大きすぎると主張してきました。協定の基準を超えなければ良いのだと事業者が居直れば、本格稼働後もずっと騒音が続きかねず、近隣の方たちの生活は騒音に悩まされ続けることになりかねません。
 市の環境保全部は、6月23日、8月23日については適切に対応するとだけ答え、何ら具体的な答えを持ち合わせていませんでした。8月28日の騒音時には「公害防止協定の70デシベル以内で範囲内だ。」と公害防止協定を持ち出し答えました。しかしその後、先日の民生福祉常任委員会では「発電所と4月に取り交わしている公害防止協定は、本格運転が始まってからのものだ。まだ適用されていない」と違う答弁をしました。
 公害防止協定の中には効力発生日についての記載が何もありません。住民の方々は当然に4月から発効したものと考えています。しかも、本格運転が始まってからとの文章はなく、答弁は担当者のメモに基づいてなされたものとのことで、こんなことでは、市の環境保全部の信頼性が大きく揺らぎます。
 さらに市は、協定は紳士協定なのだとも答えました。しかし、いくら試運転中とはいえ、そこで日々生活している住民の方々がいるのです。当然にその方々の生活が第一に考えられなければなりません。地域の住民の方々はもう受忍限度を超えています。「紳士協定」では済まされません。
 11月から本格運転が始まりますが、この状況下で住民の同意なしでの本格運転は許されません。騒音騒動を繰り返す釧路石炭火力発電所は直ちに操業を取り止めて、抜本的な対策を取ることを求めたいと思います。

未来のエネルギーは石炭じゃない
釧路石炭産業にさよならを

 27億9900万円。これは、昨年度、公的機関が釧路市の石炭産業に補助金または融資金として支払っている合計金額です。
 このうち13億3900万円は経済産業省のエネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定である「産炭地に対する石炭採掘、保安に関する技術移転事業」からの補助金、10億6000万円は、北海道産炭地域振興センターの「新産業創造等事業~基金を活用しての助成事業」の助成金、4億円は釧路市の無担保での融資金です。
 太平洋炭鉱を引き継いだ釧路コールマインはこれだけの補助金や融資を受けているにもかかわらず、2020年3月決算において、7億2400万円の赤字を計上しました。この先の経営がどうなるのか釧路市民として本当に心配でなりません。
 今年も、日本中が異常な高温に襲われています。シベリアでは8万年に一度の高温が続き山火事で大規模な森林消失が起きるとともに永久凍土が溶け出しています。はるか過去に閉じ込められていたウィルスが悠久の時を過ぎて眠りを覚ますかもしれません。こうした気候変動の最大の原因は人間活動による二酸化炭素排出によるものだと科学者は指摘しています。
 気候危機で人類の存続すら危ぶまれる中、釧路市において大量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電所を動かすというのです。釧路火力発電所の二酸化炭素排出量は年間で51万2000トンです。この二酸化炭素を吸収させるのに必要な森林面積は約8万㌶です。釧路湿原が約2.6万㌶ですから、その広大さは明らかです。
 これまで石炭産業は釧路の市民の生活基盤を支え、町の発展に貢献をし、我が町釧路の誇りでした。しかし、気候危機時代に突入した今、石炭を燃焼させて発電する行為は、あまりに無責任です。長期的視点で見れば石炭産業には希望が持てません。未来に希望の持てないエネルギーに約28億円もの莫大な税金を投じるのではなく、クリーンな自然エネルギー(太陽光、風力、波力、地熱発電など)へと振り向けるべきです。
 貴重な自然が溢れる道東の自然の中で、釧路の企業群や市民が一体となり、石炭産業から、再生可能エネルギーへの新しい産業の推進に方向転換を行うことで、釧路市の次の世代を担う子供たちに、胸を張って私たちの愛する町釧路を引き継ぐことが出来るのではないでしょうか。

低い煙突が近隣を汚染する
~公害が起きてからでは遅い~

 90メートル。釧路市鳥取地区にある日本製紙の8万kWの石炭火力発電所の煙突の高さです。
 55メートル。これは釧路市興津地区にある11.2万kWの釧路石炭火力発電所の煙突の高さです。
 逆ではないかと思うかもしれませんが事実低いのです。航空法第51条では地上高60メートル以上の煙突、鉄塔等で昼間において航空機からの視認が困難な物件には昼間障害標識の設置が必要とされます。コスト削減で煙突を低くし、住民への影響は二の次ということでしょうか。
 かつて発電所ボイラーの建設設計の責任者が度々言っていたことがあります。「発電所から5キロ圏内は、煙突からの排出ガス中に含まれる公害物質が大気中に拡散され撒き散らされる、建設する場所は慎重に慎重を期さなければならない」と。残念ながら興津の石炭火力はこうした教訓は生かされていないようです。
 日本製紙は海外炭、興津の釧路石炭火力発電所は硫黄分の少ない釧路石炭を使うとしています。しかし、釧路市との「公害防止協定」における硫黄酸化物の排出基準は、日本製紙の石炭火力が1時間当たり99㎥であるのに対し、興津の釧路石炭火力は1時間当たり175㎥です。釧路火力の方が基準が緩いのです。
 石炭火力はぜんそく、呼吸器疾患、脳梗塞、心筋梗塞などの原因となる大気汚染物質を排出します。昔に比べて少なくなったと言っても、釧路火力は年間に20万トンもの石炭を焚くので、硫黄酸化物を出さない天然ガスに比べると大量に排出するのは変わりありません。
 釧路は海の町です。風速20mにもおよぶ風が町に向かって吹くことも度々です。石炭火力が稼働すれば、大気汚染物質がこの風にのって拡散します。しかも、この著しく低い煙突では、汚染物質はより近い場所に着地するリスクが高まります。
近くには興津小学校、望洋幼稚園、かしわ幼稚園、長生園のお年寄りなど、健康への影響を受けやすい人たちが暮らしているのです。
 釧路火力発電所は北海道の環境アセスメントを通ったとしていますが、そもそも環境アセスメントは、健康被害の程度までを評価していないという根本的な問題があります
 さらに、もし石炭火力の稼働後、住民にぜんそくなど様々な疾患で苦しむ人が現れたとしても直接的に石炭火力との因果関係を突き止めることは難しく、事業者も行政も原因を認めないでしょう。日本の公害問題は過去にこうして繰り返されてきました。釧路で負の歴史を繰り返さないよう、私たちは市民として声をあげていく必要があるでしょう。

釧路火力発電所を考える会会報 第13号