会報第19号:石炭運搬のトラックによる振動に悩む住民たち 土壌に捨てられる廃棄物、本当に大丈夫?
石炭運搬のトラックによる振動に悩む住民たち
土壌に捨てられる廃棄物、本当に大丈夫?
釧路火力発電所の稼働に伴い、石炭を運搬する大型トラックが1日に何十台も住宅地の間の道路を頻繁に走行し、大きな振動を発生させています。近隣の住民の方々から多くの相談が当会にも寄せられています。なかには、大型トラックが通ることで震度3ぐらいの地震を感じたという人もいれば、営業の妨害になると言われる飲食店の方もいます。
釧路市はこの振動問題に早急に対策を取る必要があります。また、釧路火力発電所は公害防止協定で定められた内容を厳守し、早急に振動対策等を近隣住民同意の上対策を講じることが求められます。
一方、当会では「焼却灰」と表示をつけたトラックが敷地内で写真のように廃棄をしている様子をとらえました。発電所の説明によると、「復水器の冷却水で使っている一般排水、鉱内水をろ過処理した汚泥」とのこと。焼却灰であるなら大問題ですが、ろ過した後の汚泥であってもこのような形で投棄して大丈夫なのでしょうか。
また石炭灰についてはどのような形で処理されているのかも明確な説明がありません。こちらもしっかり説明すべきです。
カーボンリサイクルに頼るべきでない
2019年1月、ダボス会議の席で、当時安倍総理はカーボンリサイクルの重要性を述べました、同年2月、資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室が設置され、6月にカーボンリサイクル技術ロードマップを作成しました。ロードマップには3段階の目標が掲げられ、2020年からの第1段階は研究、技術開発、実証と拠点整備、第2段階は2030年頃にカーボンリサイクルの実用化、製造技術の進展化を目指すこと、第3段階は2050年以降、技術の低コスト化に重点を置くとされています。
また、2019年8月には一般社団法人カーボンリサイクルファンドが設立され、イノベーション(技術革新)、研究資金の調達、広報、普及、政策提言、調査を行いカーボンリサイクルの研究を後押ししています。
こうした状況下で 釧路コールマインは、カーボンリサイクルに名乗りをあげました。しかし、カーボンリサイクルは実用化にはほど遠く、むしろCO2を回収するのにエネルギーがかかり、追加的にCO2を増やすことにもつながりかねません。釧路火力発電所において言えば、CO2を回収する設備も条件も全く整っていません。「カーボンリサイクル」を言い訳に釧路火力発電所を動かし、CO2を排出し続ける時間的余裕はありません。石炭を燃やさないこと、これがもっとも効果的な対策です。
釧路火力発電所の燃料石炭分析結果
石炭は外国産?・事業者の説明を上回る燃焼性硫黄
今年、釧路火力発電所を考える会では石炭火力発電所の燃料石炭を入手し、東京の分析センターで成分分析をしました。その結果、様々な課題が浮き彫りになりました。
まず第一に、釧路火力発電所で使っている石炭が国産石炭(釧路産)ではなく、外国産のものではないかという疑いが出てきました。次の表のように、石炭灰の組成が国内炭の割合の目安に合致しないものが複数あるのです。”地産地消”が売りであったはずの発電所ですが、本当に釧路産の石炭が使われているのか、事業者はしっかり説明する義務があります。
次に、下表のように、石炭成分として燃焼性硫黄が0.09%と高い値が示されている点です。事前の事業者の説明では、「釧路の石炭は燃焼性硫黄は0.04%以内で安定していて心配いらない」と繰り返し強調していたにもかかわらずです。
釧路では酸性霧が問題になっていますが、釧路火力発電所の稼働でさらに悪化することが懸念されます。
さらに、石炭分析の結果、塩素やヒ素など毒性の強い成分が検出されていることです。
大気、水、土壌など、環境中にこうした物質がばら撒かれてからでは遅いのです。公害が起きる前に対策を市民に説明する責任も事業者にはあります。
石炭火力発電所とPM2.5
毛細血管の直径よりも小さいPM2.5は人の肺の奥深くや血管の先まで入り込み、心筋梗塞、脳卒中などといった疾患の原因になるとされています。世界的な医学雑誌「ランセット」は2018年、被害発生の蓋然性として、日本の石炭火力のPM2.5等の大気汚染による早期死亡者は、年間1,200名にものぼると報告しました。
釧路市弥生町に居住するAさんいわく、「昨年の秋ごろから、自宅で使っている。PM2.5に感応する空気清浄機が頻繁に動くようになった」とのことです。昨秋といえば、発電所の本格稼働(12月)を控え、試運転をしているタイミングです。釧路火力発電所のばいじん装置はバグフィルターを使用するもので、全てのPM2.5を補足することは不可能なので、発電所由来のものである可能性は極めて高いと考えられます。